がん免疫療法|[清和台動物病院] 兵庫県川西市の動物病院

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がん免疫療法
~がん治療 第4の選択肢~

川西市清和台東・清和台動物病院

動物には、病気やけがを自分で治そうとする自然治癒力が備わっており、その役割の一端を担っているのが『免疫』です。
免疫を担当する細胞(白血球の中のリンパ球やマクロファージ、樹状細胞など)は体の中に侵入した細菌やウイルスなどの『非自己』を認識・攻撃して排除します。また、自己の体の中に発生した異常な細胞(がん細胞など。これも『非自己』)を発見し、攻撃して死滅させます。
ですから、病気などで体の免疫力が低下したり、免疫の抑制された状態では、がんが発生しやすくなったり、転移しやすくなったりすることが知られています。
がん免疫細胞療法は、動物に生まれつき備わっている免疫の力を利用し、その力を強めることで、がんの発症や進行を抑える、という治療法です。
がんの治療は、外科手術・化学療法・放射線療法が、『三大療法』として主流を占めています。がん免疫療法は、これらに継ぐ第4の治療法として、また、がん治療特有の苦痛を伴わない、副作用の少ない治療法として、近年世界中で研究され、効果が実証された治療法として注目を集めています。

がん免疫療法の登場人物

リンパ球

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がん細胞を直接攻撃して排除したり、抗原提示細胞から提示された抗原を他のリンパ球に伝えて攻撃を促したりします。様々な種類のリンパ球が存在しますが、がん免疫療法ではおもに、樹状細胞から抗原提示を受けてがん細胞を攻撃する、細胞障害性Tリンパ球(CTL)による攻撃が主流となります。

樹状細胞

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抗原提示細胞。がん細胞を直接飲み込んで(貪食といいます)攻撃します。それと同時に、がん細胞の情報となる目印(抗原)を、がんと直接戦うリンパ球に提示して攻撃を促進するという、司令塔の役目を持っています。抗原提示細胞の中では最強の細胞です。

がん細胞

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がん細胞は、免疫抑制因子(サイトカイン)を放出して動物の免疫力を低下させたり、少し変異したりして(変装のようなものです)、あらゆる手段を使ってリンパ球や樹状細胞などの攻撃から逃れます。

がん免疫療法 Q&A

Q. どんな治療法? 他の治療法との組み合わせは?
A. 一言でいえば、『なるべくがんを大きくしない、がんで体を弱らせないことに主眼をおいた治療法』といえます。がん免疫療法単独では、進行がんや末期がんを完全に治すのは困難といわれていますが、がんの進行の抑制、再発防止、QOLを改善する効果は大いに期待できます。もちろん、他の治療法との併用も可能です。最近では、がん摘出手術後のがん再発防止を目的としてがん免疫療法を行うことが多く、もっとも効果的な治療法のひとつであると考えられています。また、化学療法(抗がん剤など)、放射線療法、さらには温熱療法、漢方療法など、他の様々な治療法との併用により、相乗効果を上げている症例がたくさんあります。
さらに、がんが進行すると、痛みや貧血など、動物にとって大変つらい症状が現れますが、がん免疫療法にはこうした苦痛をやわらげる作用があります。それらの症状が改善されることで、たとえ体内にがんが残っていたとしても、通常の生活ができるようになります。食欲がなくなってしまった子でも、リンパ球投与後に食欲が戻ることが期待できます。
Q. 副作用はないの?
A. そもそも自らの細胞を活用した治療法ですので、重篤な副作用はありません(あっても軽い微熱が出る程度です)。また、免疫細胞はがん細胞だけに作用するので、動物の身体への負担も少なくて済みます。
得意苦手
(もしくは適応外)
効果
小さながん(外科切除後の取り残しも含む)
全身に広がったがん
大きながん
T型リンパ腫 および末期リンパ腫
白血病およびエイズ感染症、敗血症
(ウイルスがTリンパ球に感染するため)
がんの治癒
外科手術後の再発防止
QOL(生活の質)の向上
Q. 具体的な治療方法や通院日数について教えてください
A. およそ、以下のようになります。
  • 1ご来院いただき、10~20 ml程の血液を採取します。(リンパ球もしくは樹状細胞の培養開始)
  • 2細胞を培養増殖させ、約2週間かけて必要数に達したら、増やした細胞を洗浄・回収して点滴注射製剤を調合します。
    (動物の状 態により、培養期間が長くかかる場合があります)
  • 3ご来院いただき、およそ30分~1時間の静脈点滴にて、増やした細胞を体内に戻します。
    (そのとき同時に、再び血液を採取し、次の細胞培養を開始します。)
    基本的には、上記の繰り返しになります。
標準的な治療では2週間に一回の投与を4~6回行います。その後は月に一回投与を4~6回行います。その後、検診にて、治療の終了、中断、継続を検討します。
投与間隔や回数は、病状を見させていただき、ご相談のうえで決めさせていただきます。
基本的に入院は必要ありませんが、静脈点滴をより安全に行うために、半日ほどのお預かりをさせていただきます。

がん免疫療法 DC-CAT療法・CAT療法

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DC-CAT免疫療法(樹状細胞療法 および がん抗原認識型活性化リンパ球療法)

特異的免疫療法。がんを狙い撃ちすることができるため、攻撃力の高い免疫反応が期待できます。

すりつぶしたがん細胞(腫瘍組織)を、樹状細胞と一緒に培養します。樹状細胞は、リンパ球に、がん細胞を見分けて特異的に攻撃させるための目印(がん抗原)を提示する細胞です。この樹状細胞と一緒に、活性化して1000倍に増やしたリンパ球を投与することで、よりがん細胞に対して特異的にリンパ球を攻撃させる療法です。増殖したリンパ球は静脈点滴にて投与、樹状細胞は腫瘍(もしくは腫瘍近くのリンパ節)に注射投与します。

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CAT療法(活性化リンパ球療法)

非特異的免疫療法。特異的免疫療法に比べると攻撃力は高くはないですが、免疫力を全体的に高めることが出来ます。微小ながんに対しての治療効果、がん摘出手術後の再発防止の効果などが期待できます。

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血液(10-12ml)からリンパ球を回収し、薬剤を加えてリンパ球の活性化・増殖を行ないます。
その後、およそ1000倍に増えたリンパ球を洗浄・回収し、点滴で体内に戻します。

最後に・・・がん治療について

がん治療は、がんの発症する部位や種類によって、治療法の選択はさまざまです。固形がんであれば、外科手術で切り取ったり、細胞に有害な放射線をがんに照射したりして、がん細胞を破壊します。いずれも局所療法と呼ばれる治療法です。
抗がん剤は、外科切除や放射線照射が困難(もしくは無理)な場所にあるがんや、全身に散らばったがん、血液のがんなどに効果を発揮する全身療法です。これらの『三大療法』は、がんを体から完全に取り除くことを目的とした治療法です。
しかし、がん組織だけでなく、正常な組織・細胞までをも少なからず攻撃してしまうので、治療の過程で動物が弱ってしまうことがあります。よくなるための治療なのに、かえって動物のQOL(Quality of Life = 生活の質)を低下させてしまう可能性もあるのです。

三大療法のメリットとデメリット

メリット

がんを完全に取り除く(もしくは寛解状態に至る)ことができる。

デメリット

•麻酔のリスク(外科手術、放射能量法
•健康な部分へのダメージ、合併症
•抗がん剤の副反応による免疫力低下、疼痛、食欲不振

がん免疫療法では、がんを体から完全に取り除くことは難しいです。しかし、正常な組織や、 細胞を傷つけることはありません。また、がんそのものや他の治療の副反応による、痛みや貧血などによる苦痛を和らげる効果が期待できます。がんを完全に取り除くことよりも、進行を抑制し、がんで体を弱らせないことを主眼においた治療法です。

がん免疫療法のデメリット

メリット

○健康な部分は影響なし(がん細胞のみを攻撃する)
○副反応はほとんどなし
○免疫力向上、疼痛緩和、食欲増進(QOL改善)
○がんを小さくすることが期待できる

デメリット

がんを完全に取り除くことは困難

治療法を選ぶときに、最も大切なことはそのときどきで微妙に変化する動物に状態を的確に把握することです。

がんに冒された動物たちの病態、病状はめまぐるしく変化するものです。はじめのうちはその変化も緩やかですが、いったん悪い方向へ進みだすと、状態の悪化がスピードアップする傾向にあります。
がん治療においては、そのときどきの病状、状態に合わせ、決して焦らず、そのときにぴったり合った治療法を取り捨て選択することが一番重要です。

医療の技術の発展に伴い、動物の寿命もさらに伸びてきております。その結果、人と同様、がんを患う子も増えてきました。
その中には末期がんと呼ばれる段階の子も多くおられます。それらの子は、来院時にはすでに体が弱りきっていたり、がんの転移が広範囲に及んでいたりして、外科手術や放射能療法、抗がん剤などの治療法を、すでに選択できない段階まで進んでしまっていることが多いです。

そんな弱ってしまった子たちに、何かしてやれることはないか、少しでも苦痛を取り除く方法はないか、できれば、がんも小さくしてくれるような治療法はないだろうか‥

がん免疫療法はがん治療における第四番目の選択肢として、そして、三大療法とは別視点からの治療法として存在します。

こうしている今このときも、がん治療における新しい治療法が日々研究され、開発され続けています。少し前までは、あきらめなければならなかった病気も、あきらめずに済む日がもうきているかもしれません。